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2017年新春鼎談

一人ひとりが同友会の語り部に
~ 企業づくりの実践と仲間の輪を広げ、飛躍の年に ~

岡山県中小企業家同友会
代表理事 藤井 孝章
代表理事 藤田 賢治
代表理事 松尾 正男


 - 2017年新春鼎談です。今回は代表理事のお三方に昨年を振り返っていただくとともに、各社の企業づくりの実践と新年の抱負を語っていただきます。
 お三方の会社は業種も様々ですが、まず各社の景況感についてお伺いします。

自社を取り巻く経営環境の変化について

(藤田) 建設業界全体の景気は良いと思います。当社の売上もリーマンショック以前を超える水準となり、利益率も向上しています。
 度重なる地震災害や、杭の偽装問題などの影響で、より詳細に地質調査を実施する重要性が再認識され、一つの物件あたりのボーリング調査の依頼数が増えました。地震時に地盤が液状化するかどうかの判定に伴う試験なども増えてきています。元請業者の責任が問われるようになり、そうした安全性に関わる調査等の発注は、より信用できる企業が選ばれるようになってきました。これらのことはわが社にとっては追い風になっていると感じています。

- 業界全体の景況感は改善されているということですが、リーマンショック後に業務の見直しや改善を進めてこられたことも業績回復に結びついているんじゃないですか?

(藤田) それはあるでしょうね。従来の働き方を見直し、就業規則の改定も含めて無駄の削減に取り組みました。一例を挙げると、現場と事務職の就業時間を見直すことで、無駄な残業の圧縮につながりました。確かにこうした積み重ねがなければ回復は遅れたかもしれません。

- 藤井代表はいかがでしょうか?

(藤井) 建設関係の公共事業は、5、6年前から毎年前年対比10%以上のペースで減り続けているのが現状です。その意味でも、公共工事主体の受注体制から民間工事主体へと徐々にシフトする必要があると感じていますし、当社もそのように取り組んできました。その際に役だったのが経営指針書です。経営指針を実践していく中で、10年前は受注比率が官工事40%に対して民間工事60%だったものが、今は民間工事85%にまでシフトしてきました。
 ただ、一口に民間工事と言っても、ここ数年で設備投資に積極的な企業と控える企業の二極化が顕著になっています。

― 二極化の理由はなんでしょうか?

(藤井) 一つは法令遵守ということが従来以上に重要視されてきたためです。監督署が求める基準が厳しくなってきていることもありますが、最近は我々の方からお客様に作業環境改善の提案をさせていただくこともあります。コンプライアンスのためには投資を惜しまない企業が増えています。
 もう一つの理由は、安全性・生産性向上のニーズが増えているためです。お客様は常に良質なものを求めていますが、その水準がどんどん高くなってきています。コスト削減は当然のこととして、それ以上に健康志向・環境改善型の提案を求められることが多い。空調はもちろん、温湿度管理、ウイルス対策や除菌などのリクエストが増えています。一方で投資の回収基準が短くなり、最近は1年で回収できる提案を求められるようになっています。我々もできる限り設備投資に積極的なお客様のニーズに応えるため、待ち受け型から提案型への転換を進めてきました。当社でも、様子を見ながら、重機や車輛、計測器などの設備計画を着実に進めようと思っています。

― 松尾代表は今の外部環境の変化をどのように見ていますか?

(松尾) 米国の次期大統領にトランプ氏が選出され、円安や株高、TPPをめぐる情勢など、今まで想像もしなかった急激な変化が表面化しつつあります。我々、地方の中小企業もグローバル化した現代社会の中で経営をしている以上、必ず大きな影響を受けることになるでしょう。少子高齢化の進展に伴って健康寿命の延伸への関心が高まりつつあり、また将来の労働力を確保しなければならないという意識も強くなっています。こうした時代の要請が、当社の運動器サポート機能商品のニーズに直結しています。AI、IoT、ロボット技術など、周辺の技術革新も日進月歩です。従来の考え方の枠を超えた発想が求められています。
 当社の主要取引先である柔整業界は八割方が厳しい状況です。規制緩和で、限られた市場内の競合相手が増え、今後も一層厳しくなることが予想されます。社会保障制度の存続も危惧される中、病院や保険に依存した体質から、今後は「対価を払ってでも自分の健康は自分で守る」というヘルスケア志向への転換が進むと思います。それに伴って当社に求められるものも変わってきます。これからの社会で本当に人々の役に立つものは何か。今までの考え方そのものを変える必要がある。情勢の変化は業種に関わりなく全ての企業に影響します。会内でも議論が必要だと思いますね。  

組織づくりと人材育成

― 適性な危機感と冷静な情勢分析を欠くと、自社の方針や戦略まで誤りかねない。しかし正しい方針を打ち立てても、それを実際に動かすのは社員です。各社の人材育成についてお伺いします。


(藤田) 当社は平成7年から同友会の共同求人で採用を続けています。毎年一人以上の新卒採用を心掛けてきました。そのおかげで現在は社内の年齢構成バランスが整い、20代から60代まで、幅広い層の社員によって組織に厚みが出てきました。社員たちも新人が入社するのを楽しみにしています。今は新卒者が半数を越え、中堅社員や幹部社員として活動してくれています。当社では専門的な技術研修のほかは、同友会の社員共育大学や幹部社員大学を活用して社員教育に取り組んでいます。外部研修にも積極的に参加してもらっています。手当を充実させ、資格試験代金の援助などもしています。徐々に社内で育ち合う風土ができてきたように思います。

(藤井) 当社も毎年2、3人の新卒と中途を併せて採用しています。いかに働きやすい職場をつくり、社員に能力を発揮してもらうかが業績に直結します。当社は社員のスキルアップとチーム力の向上を目指し取り組んでいます。個人目標を立てて、資格取得の状況を全社的に見える化しています。また社内委員会活動、3S活動などを通じて社員の一層のリーダーシップを養い、企業力の向上を目指しています。

(松尾) 社員の成長が企業の成長につながります。当社は新卒採用に平成10年から取り組んでおり、毎年複数人を定期的に採用してきました。28年度は12人(院卒1、大卒3、高卒8)、29年度は13人(院卒1、大卒7、高卒5)を予定しています。今では社内の殆どが新卒採用で入社した社員となりました。
社外研修は、同友会の社員共育大学、幹部社員大学、同友会大学、それから新春経営講演会や教育講演会などの全県行事への参加ですね。「同友会は学ぶ会」ということが全社内的に定着しています。社員の方から「あの勉強会に行ってみたい」という声が上がることも珍しくありません。同じことでも、社内で社長が言うのと社外で第三者から聞くのとでは響き方がまるで違います。
 昨年からは、社員の提案で社内で自主的に学び合う研修もスタートしました。講師役も全て社員が担当し、階層別にスキルアップを図っています。専門的な知識や技能習得のほかに一般選択の講座もあり、語学やパソコン、マーケティングなどについて前期・後期の半年単位で学べるようになっています。

― 新しい取り組みでどんな変化がありましたか?

(松尾) 仕事や部門を越えたコミュニケーションができるようになり、社内の雰囲気が明らかに良くなりました。
 ほかにも仕事に必要な資格はどんどん取ってもらう。自ら学ぶ学習型企業をめざしています。人材が最大の強みになれば持続可能な企業になれるはずです。

― 社内報もリニューアルされたそうですね。

(松尾) 毎月発行の『以心伝心』です。思いきって紙面構成をプロに任せてみたらクオリティがぐっと上がった(笑)。それを社員が持ち帰って家族にも読んでもらっているようです。社内だけではなく家庭内のコミュニケーションのツールにもなっている。会社見学やイベントにもご家族を招待します。社員のお母さんやおばあちゃんから「いつもお世話になっています」と言っていただけるのは本当にありがたいですね。

                 ▲ダイヤ工業社内報 『以心伝心』

経営改善の取り組み

― 最近は会内でも経営指針の「実践」ということがよく言われるようになってきました。実践の定義は様々でしょうが、皆さんが今取り組んでいる実践と今後の展望を語ってください。

(藤田) 現在業績は比較的好調に推移していますが、油断はできません。経費の圧縮はもちろん、財務内容を社員と共有して、一層の無駄の削減につなげています。その一環としてIT化を進め、ペーパーレス化や業務の効率化につながっています。幸い外部環境は比較的良好ですが、そこに安住せず、自社の強みの一層の強化と新商品の開発―うちで言うところの新工法の開発ですね。それと新市場の開拓を行っています。地盤改良工事は価格競争が激しいので、いかにそこに巻き込まれずに自社の強みを発揮するかが課題です。当社は調査や設計、そして相談業務が得意ですから、キャッチフレーズとしている「土と基礎のコンサルタント」を全面に押し出していきたいと考えています。

(藤井) 当社では経営指針の実践により財務体質の強化を図っています。昨年からはその取り組みをさらに充実させるため、「エコアクション21」の認定取得を目指しています。財務面での成果はもちろんですが、環境活動を加えて化学物質や産業廃棄物の管理を徹底し、環境に配慮した経営を推し進めていきたい。
 2つ目は、付加価値の向上。お客様のニーズの発掘と深堀りをいかに進めるかが課題です。昨年は、空気中の構成成分・培養液・温度・湿度などをコントロールできる野菜の栽培プラントを当社としては初めて手掛けました。他にも魚の養殖プラントなどにも携わっており、お客様のニーズが多様化してきていることを実感しています。こうしたご期待に応えるためにも新しい発想が必要です。
 3つ目は残業削減です。建設業界では休日や深夜勤務は半ば当たり前のことのようになっていますが、そうした業界の常識に挑戦したいと思っています。前年比10%の時短に取り組み、徐々に成果が上がりつつあります。業務の合理化と協力会組織の増強も併せて行い、大切な家族を守る社員の、安定的な生活の質の向上を目指したいと思っています。

(松尾) 当社は健康のための医療用品を扱っていますから、社員の健康にも十分な配慮をしなければなりません。昨年は全国健康保険協会の「健康企業宣言」に取り組み、社員とその家族の心と身体の健康づくりを推進しています。また経産省の「攻めのIT経営中小企業百選」にも選ばれ、データに基づいてお客様のニーズに的確に応えられるコールセンターの再構築や、物流センターの生産管理能力向上を進めています。今後はヘルスケアビジネスや運動器の年齢チェックと診断にも力を入れていく計画です。人工歯根も将来の大きな柱となるよう育てたい。やることは無限にあります。
 一方で会社の規模が大きくなり、組織のシェイプアップの必要も感じています。中小企業の原点に立ち戻り、一人一人の力量が充分に発揮できるよう役割と責任を一層明確にしてもう一度考え直したい。
 それともう一つ。「面白い企業」から「強い企業」への転換を図っています。確かにダイヤ工業は面白い会社として認めていただいているようですが、それだけでは飯が食えない(笑)。面白くて、なおかつ飯が食っていけるような企業にしたいですね。

地元岡山の未来について

― 各社の経営基盤でもある岡山の将来にはどのような思いや期待を抱かれているでしょうか

(藤井) 地域経済の活性化と産業振興に、産官学金が一体となって力を結集していくことが最も必要だと思います。そのためにも我々中小企業にはもっと前に出ていく姿勢が求められているのではないでしょうか。中山間地域では少子高齢化と過疎化が進み、このままでは中小企業も地域のコミュニティも存続が危ぶまれます。地域づくりも、企業経営と同様にPDCAと5W1Hを明確にして取り組むことが必要です。持続可能な社会づくりのためにも、それぞれの地域の不安材料を今のうちに危機感をもって解決しなければなりません。

(松尾) 私は岡山に立地していて本当に良かったと思います。全国的に見ても、気候も温暖で資源も豊富にあり、恵まれていると思います。「行政が何もしてくれないからやらない」という発想ではなく、我々にもできることは沢山あります。地方創生の鍵を握るのは、日本の雇用の七割を支える中小企業です。今こそ産官学民金が一体となって知恵を出し合うことが必要です。そのためには同友会が接着剤の役割を担うこともあり得るでしょう。また同友会であればそれができるはずです。アイデアだけでなく、実力が求められる時代になってきたと感じます。

(藤田) 災害も少なく、いい土地柄だと思います。一社でも多く元気な中小企業が増えて欲しいですね。また行政には、地元の中小企業を育てるという視点で政策を進めていただきたい。  

2017年の岡山同友会の姿

― 最後に今年の岡山同友会の展望をお願いします

(藤田) 第六期中期ビジョンが今年三年目に入ります。ビジョン実現に向けて進捗状況の確認と現状把握を行い、全会を挙げて運動を進めていく必要があります。入会の目的と三つの目的を達成できる同友会でありたいですね。良い会社づくりには業績向上は欠かせません。そのためには、自社経営に真正面から取り組み、そこで直面した課題を持って例会に参加する。そして少しずつでも前進していくことが大切だと思います。「同友会ごっこ」ではなく、本来の同友会の目的を忘れないようにしたいものです。

(松尾) 同友会の熱烈なファンを一人でも増やしたいですね。そしてますます活気に満ちた組織になることを願っています。同友会がいかに素晴らしい会であるかということは、全国行事で各地の事例に接すればよく分かります。例えば「(自社経営と会活動の)不離一体シート」の活用。会社の歴史と会内での自分の気付きの歴史を一枚のシートに並べてみれば、自分の実践状況が一目瞭然にわかります。
 それから「全ての会合の開会挨拶では五分間の経営報告を」という事例。そういう雰囲気、同友会を目指したいですね。同友会運動を進めるとはどういうことかという指標が必要ではないかと思います。持続可能な企業になるためには何が必要か。本来の同友会運動とは何か。そういったことを追求して、我々がまず語り部になる。そういう考え方の企業が増えることが地域づくりにもつながると思います。そのためにも一人でも多
くの仲間を増やすことが必要です。会のために仲間を増やすのではなく、地域の中小企業の発展のためには同友会が必要だと全員が考えれば、必ず運動は進むはずです。

(藤井) 不透明な情勢動向が想定される年です。地域から「さすが同友会」と言われるように、真の同友会運動を実践する企業を増やしましょう。様々な経営者が様々な実践事例を語り、様々な学びができる組織づくりを推し進めたいと思います。「一人ひとりが同友会の語り部に」―そういう年にしたい。
 果敢に実践された人は同友会に確信を持っています。かく言う私もその一人です。しかし一人ひとりが確信を持つに至るまでには、もっと踏み込んだ運動が必要です。同友会の実践とは成果を伴う実践でなければなりません。そのためには本音で語らなければ、どのような成果にも結びつきません。自らも含めて、今年こそ同友会理念と同友会運動の素晴らしさを一人でも多くの経営者と分かち合い、成果のある一年にしたい
と心から思っています。

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