中同協では3月4日に「中小企業の倒産・廃業を避けるために~新型コロナウイルスに関する緊急要望・提言」、3月31日に第2次緊急要望・提言を提出しましたが、その後の動向などを踏まえ、「新型コロナウイルスに関する第3次緊急要望・提言」を作成、4月20日に中小企業庁や各政党に届けました。
中小企業の倒産・廃業を避け、雇用と日本経済を守るために
新型コロナウイルスに関する第3次緊急要望・提言
2020年4月20日
中小企業家同友会全国協議会
会長 広浜 泰久
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私たち中小企業家同友会全国協議会[略称・中同協]は、1969年(昭和44年)設立以来、自助努力による経営の安定・発展と、中小企業をとりまく経営環境を是正することに努めて参りました。
新型コロナウイルス感染症の拡大は、「大恐慌以来」とも言われるほど、各業界に未曾有の規模で極めて深刻な影響を与えており、多くの中小企業が倒産・廃業の危機に追い込まれる切迫した事態となりつつあります。4月16日には全国に緊急事態宣言が発令され、一層経済の収縮が強まることが見込まれます。このままでは多くの雇用が喪失し、日本経済が崩壊の危機に直面する恐れがあります。
当会では、3月4日および3月31日の2回にわたって緊急要望・提言を発表して関係省庁・各政党などと懇談を行ってきましたが、多くの中小企業の経営は急激に悪化しつつあり、まさに瀬戸際に立たされています。中小企業経営者の経営意欲を喪失しないよう新たな政策を大胆に構築し、即実行することが求められています。そうでなければ国民の暮らしと生命は守れないという、まさに今「緊急事態」にあります。雇用と地域社会を守り、日本経済崩壊の危機を防ぐためには中小企業の維持・発展が不可決であり、私たちは下記のような政策の実施を緊急に求めるものです。関係各位の早急なご協力、ご支援をお願いします。
1.緊急対策
1.自粛・休業による売上減少などに対する補償
感染拡大を防止するためにも、自粛要請や休業要請は補償と一体となっていることが必要である。自粛・休業要請などにより生じた企業の売上減少などの損失に対して、国としてしっかりと補償を行うこと。影響の長期化が見込まれる中、持続化給付金を期間に応じて拡充するなど、あらゆる手立てを尽くして中小企業や雇用を守ること。地方創生臨時交付金を増額し、地方の実情に応じて柔軟に活用できる制度とすること。
2.企業の倒産を防ぐための対策
1.永久劣後ローンの活用
売上高急減などで自己資本の多くを毀損した中小企業に対しては、資金繰り支援と併せて資本増強策が必要である。永久劣後ローンの活用を進めること(返済の優先順位が一般債権に劣後する借入金であり、議決権も返済期限もない。余裕ができた段階で返済する制度)。対象企業を決める際は、その企業と取引のある地域金融機関の紹介・推薦を条件とし、不適切な企業に資金が流れるのを防ぐ。金利は当初は無利息とし、支援先企業の経営安定化に伴って順次金利を引き上げる。(※)
2. 既往債権の支払猶予の徹底
中小企業金融円滑化法を再度制定するなど、既往債権の支払猶予の申し出があった場合、原則として応じることを徹底すること。リース料についても同様とすること。既往債務の条件変更を行った企業に対し、格付け変更など不利な扱いをしないことを徹底すること。
3. 現金払いの徹底、ファクタリング事業者への上限規制
大手企業の下請企業などに対する代金支払いは、手形ではなく現金とすることを徹底すること。売掛債権の現金化を前倒しで行うファクタリング事業者に対し、手数料上限の設定を行い、中小企業者の手元現金を目減りさせないよう取り計らうこと。
(※)日本経済新聞2020年1月3日「中小企業支援、永久劣後ローンで5兆円用意を」三井住友信託銀行名誉顧問 高橋温氏。「スモールサンニュース4月号・号外」立教大学名誉教授 山口義行氏。
4. 緊急融資制度などの利息の見直し、要件の緩和
緊急融資にあたっては体制の強化、迅速な対応、手続き・審査の簡略化を徹底すること。無利息・無担保の緊急融資制度は、3 年間は無利息だがそれ以降の金利が相当な金額になる。4 年目以降も含めて完全無利子の制度とすること。また、多くの融資制度や助成金について、多くの場合、売上の前年または前々年対比減が条件となっているが、前年・前々年の売上が特殊要因などで非常に低かった企業は適用外となってしまう。多くの中小企業が利用できるように、一層柔軟に対応すること。
5. 固定費削減の支援
固定費負担を軽減するため、家賃の支払い猶予や減額の実施を法制化などにより促進すること。その際は、不動産所有者に対して猶予や減額の状況に応じて固定資産税や法人税、消費税の減免、借入金の返済猶予などを行うこと。社会保険料については、猶予制度はあるが次年度は2 年分の支払いが大きな負担となる。猶予でなく、免除制度を設けること。
3.雇用を守るための対策
1. 雇用調整助成金の強化、つなぎ融資の創設
上限の引き上げ、短時間休業の要件緩和など、一層の強化を図ること。申請をより簡便にし、迅速に助成できるよう体制を強化すること。また申請企業について、助成金が出るまでのつなぎ融資を地域金融機関の窓口を活用して、迅速に受け取れる制度を創設すること。
2. 失業給付の柔軟な運用
昨年の台風第19 号に伴う特例措置と同様に、実際に離職していなくても、または再雇用を約した一時的な離職の場合であっても、労働者が失業給付(雇用保険の基本手当)を受給できるようにすること。
3. 社内での感染者・濃厚接触者発生時の対応支援
1)社員に濃厚接触者が出て休業させた場合の賃金に対する助成金を設けること。
2)社内に陽性判定者が出た場合の対応ガイドラインを作成し公表すること。併せてチェックシートなどを示し、事前の対策を中小企業に促すこと。
3)保健所の体制を抜本的に強化し、地域での感染者の対応等に必要な人員などを整えること。企業内で感染者が出た場合、保健所が取引先などに聴き取りを行う際は、事前に当該企業に連絡するなど協議しながら対応を進めること。
4. 働く人の安全・生活安定のために
1)大手企業に対して、取引業者の社員の安全を守るため不急の納期は延期を宣言するように促すこと。
2)休業等により賃金減となった社員に対し、住宅ローンや奨学金返済について支払い猶予制度を設けること。
5. テレワークの導入支援
中小企業が、休業もしくはテレワークを検討する際のフローチャートやガイドラインを早急に整備し、公表すること。テレワークのためのハードやソフト導入に対する助成制度をさらに充実させること。
6. 補助金、許認可などでの柔軟な対応を
1)ものづくり補助金について、提出書類の中に事業場内最低賃金で働く従業員の氏名・捺印の欄があるが、本人および社内で最低賃金である者が特定され、悪影響をもたらすので氏名・捺印を不要とすること。また「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる」ことが要件となっているが、コロナショックの影響を鑑み、要件を緩和すること。
2)中小企業の派遣会社は、今回の影響により派遣免許の資産要件基準のクリアが厳しくなる会社が増えると思われる。派遣許可の更新ができず廃業になり派遣スタッフが失業することのないよう、派遣許認可の更新に特例措置を設けること。
2.経済対策、今後の対策
1.消費税の減税・インボイスの導入見送り
景気の大きな減退が予測される中、消費を喚起し、日本経済の立て直しを図っていくために、消費税減税を行うこと。その際には、中小企業のレジ設定や料金表・ホームページ改訂など必要な対応を支援すること。中小・小規模事業者の死活問題である適格請求書等保存方式(インボイス)の導入を見送ること。
2.長期を見すえた対策を
新型コロナの経済的影響は長期にわたることが予想され、それを見すえた対策が求められる。収束に向かう際は、各フェーズにあった政策を実施し、地域経済を守り、中小企業・小規模企業を守る政策を進めていく必要がある。経済回復期にあたっては、(1)長期間休業を余儀なくされた企業の事業復旧に対する支援策を設けること、(2)新型コロナに関する借入金の返済について返済金額を税法上損金算入できるようするなど、負担を軽減する施策を実施し、中小企業の立ち直りを支援すること。
以上
※当会が3月1日(第1次)及び3月31日(第2次)に発表した緊急要望(当会ホームページ参照)についても、未実現の内容については、引き続き実現に向けて取り組んでいただくことを重ねて要望します。
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