「同友会理念の実践で『一流の中小企業』をめざす~35年間黒字を支えたもの」 ㈱成和設備工業所 藤井孝章
第1分科会は㈱拓新産業の藤河次宏社長(福岡同友会)に、創業の苦難から同友会での学びを迷わずに実践してこられた過程の中で、経営指針の実践による社員との関わりをどのように進めてこられたかを熱く報告して頂きました。
藤河社長は、創業当初に新卒求人の応募者が誰一人いなかった自社を、社員が満足し魅力あふれる会社に変えるために、「一流の中小企業」を目標に掲げて35年間経営に取り組んでこられました。そのために経営指針書を作成して毎年社内発表を継続する中で、次第に社員主導の風土になり、社員は「会社は自分のもの」と考えるようになってきました。「一流の中小企業」実現のため、建設業では至難とも思える有給休暇完全消化や女性社員の育児休暇取得率100%など、「当り前のこと」を「当り前に」取り組んでこられました。その根幹には、『労使見解』に謳われた、社員の基本的な権利を尊重する「人間尊重の経営」の精神が脈々と流れています。藤河社長は社員との信頼関係を築くために社長質問会や社長報告会を継続開催しているそうですが、それは「中小企業だからこそ、厳しい経営環境だからこそ、社長の夢を社員に繰り返し語る必要がある」という強い確信があるからこそです。
また社員満足度の高い「一流の中小企業」を支えるためには、「強い会社づくり」の基礎として「攻める」「備える」「耐える」ことが必要であり、そのためには財務戦略は欠かせないことを強調されました。そして「悲観的に準備し、楽観的に対処する」実践報告をしていただきました。
経営指針により同友会理念で育った社員が、「生徒から先生へ」変わっていったそうです。そうした社員と会社の自主自立性についても報告していただきました。
グループ討論では、61人が6テーブルに分かれて「何のための経営指針なのか?」「経営指針の実践で見えてくるものは何か?」との討議の柱で意見交換をしました。
各テーブルではそれらの討議の柱に加えて「私が考える一流の中小企業とは?」の議論まで及ぶ活発な討議が行われました。その内容は、発表者や座長のまとめでもそれぞれにあり、学び多い充実した第1分科会でした。
参加者の主な感想
▼社員さんの権利を尊重して一流の中小企業をめざすためには強い理念と強力な財務の裏づけが必要。同友会経営者は、社員さんが生き生きとした人生が送れるよう自らに負荷をかけて動かしていくのが醍醐味かと思います。
▼顧客満足より従業員満足を高めていく事で一流の中小企業に近づけるということを指摘され、ハッとしました。当店は主に家族で運営しておりますが、家族の中であってもそれに甘えることなく満足を高めるような計画や経営をしていくべきではないかと感じました。そのためにも経営指針が必要だと気付きました。
▼社長だけが悩んでいるのではなく、社員はもっと悩んでいる。社員に夢を語り、実行しないといけない。指針を発表して終わりでなくPDCAを繰り返すことでさらに進化させる。社員と共に悩みを解消し成長につなげていきたい。労使見解をしっかり読み、自社を成長させ、社員に幸せになってもらうことを実践します。
▼経営に飛び道具なし。愚直に実践していくこと。コミュニケーションを大切にしていくこと。約束を守ること。それに尽きると学びました。