
岡山同友会40周年を記念し、顧問・相談役の皆さんから心に残っているエピソードなどをお話しいただきました。これから活躍が期待される役員や会員の皆さんに期待を込めて、未来へつなぐ特集記事として掲載します。
パネリスト

- (公財)操風会 岡山旭東病院 総院長 土井 章弘 氏 (1987年入会:岡山同友会常任相談役)
1991年代表理事に就任、2012年より現職
設立:1983年 職員数:501人 事業内容:医療と教育を担う脳神経・運動器専門総合病院
所在地:岡山市中区倉田567-1(https://www.kyokuto.or.jp/) - (株)フジタ地質 取締役会長 藤田 賢治 氏 (1991年入会:岡山同友会顧問)
2011年代表理事に就任、2017年より現職
設立:1977年 社員数:31人 事業内容:土と基礎のコンサルタント
所在地:岡山市中区雄町425-1(https://geo-fujita.jp/) - (株)ジョア 会長 神馬 孝司 氏 (1992年入会:岡山同友会顧問)
2003年副代表理事に就任、2013年より現職
設立:1989年 社員数:45人
事業内容:女性用しごと服と、その関連商品の企画製造販売
所在地:岡山市南区内尾288-14(https://www.joie.co.jp/) - (株)マスカット薬局 代表取締役 髙橋 正志 氏 (2006年入会:岡山同友会顧問)
2019年 代表理事に就任、2024年より現職
設立:1998年 社員数:97人 事業内容:薬局、保険調剤、一般用医薬品販売
所在地:岡山市北区田益1290-1(https://muscat-pharmacy.jp/)
コーディネーター

- NPOエリア・イノベーション 代表 藤井 智晴 氏 (2010年入会:岡山同友会理事・広報委員長)
設立2010年 事業内容:インターンを活かした事業創出と人材・組織の成長支援
https://area-i.org/
- 以下、本文中では敬称を省略します
入会のきっかけ
| 藤井 | 最初のテーマは「入会のきっかけ」です。藤田さんは入会にあたりどのような経営課題を学ぼうと考えていましたか? |
| 藤田 | 社員が10人を超えた頃から、一人では会社を回せなくなり、さまざまな問題が生じました。経営の勉強の必要性を感じ始めていた時、同級生の岩田冨士夫君(㈱インパム取締役会長)に誘われて入会しました。 |
| 髙橋 | 私は創業後7年ほどで経営が行き詰まった時期がありました。ちょうどその頃、他の勉強会で知り合った方々から「中小企業家同友会という、経営を学べる場がある」と教えられ、思い切って例会に参加しました。そこで経営指針を成文化して業績を向上させた話を聞き、自社に欠けているのは長期ビジョンや事業計画だと痛感しました。そして入会を決意したのです。初めて参加した例会では土井さんから「ようこそ同友会病院へ。ここは病んでいる経営者を治療するところです。一刻も速く治療してよい会社になりましょう」と声をかけられました。その言葉に背中を押されて、入会後すぐに経営指針の成文化に取り組みました。 |
| 土井 | 香川で勤務医をしていた時、たまたま同友会主催の教育講演会に参加したことが縁となりました。当初は経営者でなければ会員になれないとのことで入会できませんでしたが、2年間案内を送ってもらっていました。87年に岡山で父の病院を継いで本格的に経営に携わる立場となったため、「同友会に入りたい」と事務局に連絡し、当時の事務局長だった磨田俊司さんの尽力で入会しました。臨床一辺倒だった自分に経営の基礎を教えてくれる場として、同友会はまさに渡りに船でした。入会直後から経営指針の勉強会に参加し、2年後には経営指針書を初めて策定しました。 |
| 神馬 | 創業後は順調でしたが「このままで良いのか」と迷い、経営を学びたいと思うようになりました。そんな時に経営コンサルタントの額田信一さん(元会員・俳優)と出会い、経営指針づくりセミナーに参加しました。その最終日に「同友会という経営者の会合がある」と誘われ入会しました。創業6年目、初めて例会に参加した際、旧・岡山北支部の先輩方が堂々と自分の考えを語る姿に衝撃を受けました。正直「ついていけない」と思うほどでしたが、「自社をもっと良くするため必死に学ぼう」と決意しました。 |
印象的な体験や転機について
| 藤井 | 次のテーマは「同友会活動での印象的な体験や転機」です。同友会に入って本当に良かったと実感した出来事や、自身の経営観が変わるきっかけとなった経験は何でしょうか? |
| 髙橋 | やはり人生を動かすのは人との出会いです。入会間もない頃、土井さんから障害者問題委員会の初代委員長を任され、荷が重いと思いつつも引き受けたことが大きな転機となりました。その活動を通じて中小企業家同友会全国協議会(略称中同協。同友会の全国組織)の会長も務めた赤石義博さんと出会い、「自主・民主・共生の理念こそ経営の根幹」との言葉に経営観・人生観が大きく変わりました。 また、経営指針書づくりで行き詰まった際、土井さんから「指針書を交換しよう」と提案され、病院の詳細な指針書を参考にしたことで自社の指針が飛躍的に充実しました。あの時のご厚意には今も感謝しています。学ぶ機会は決して断ってはいけないと痛感しました。 |
| 藤井 | 土井さんはいかがでしょうか? |
| 土井 | 印象的な体験は数え切れませんが、中でも大田堯先生との出会いは、私の経営観・人生観を大きく変えました。大田先生は日本教育学会の会長も務められた方ですが、生命の尊さ、生命の不思議を学びました。「生命は一人ひとり違うが、互いに助け合わねばならない」「生命は変わっていくものだ」との教えは、人間も成長し変化していくべきだと示してくれました。この学びが私の生き方の軸となり、忙しさに流されそうな時も支えてくれました。 |
| 神馬 | 同友会は経営者の生き様を学ぶ場でした。他の経営者仲間との集まりは儲け話が中心でしたが、同友会の例会では人生や人間性に正面から向き合う議論があり、学生時代に仲間と語り合った頃を思い出しました。全国行事にも参加し、北海道同友会の大久保尚孝さんや中同協歴代会長の熱い報告に触れ、「自分も負けられない」と奮い立ちました。尊敬する経営者との出会いこそ、私にとって最大の財産です。 |
| 藤田 | 入会直後から幹事や委員を任され、仲間ができたことが大きな経験でした。特に滋賀同友会への派遣研修では、経営について本音で議論し合う姿に触れ、同友会の真剣な学びの文化に衝撃を受けました。あの体験を機に同友会活動への向き合い方が変わり、経営指針成文化セミナーの形態も変わりました。他県との交流や合同例会にも広がり、自分ひとりでは得られない体験を重ね、本当に入会して良かったと感じています。 |

経営への影響
| 藤井 | 続いてのテーマは「同友会での学びが自社の経営にどのように活かされたか」です。同友会活動を通じて得たものが会社経営に与えた影響についてお話しください。 |
| 土井 | 同友会の基本理念は「共に育つ」ことです。病院経営にもこの考えを取り入れ、職員同士が教え合い助け合う社風を広めてきました。私は院長ですが『メダカの学校』に歌われているように一匹のメダカにすぎず、皆が自主的に議論し、民主的に問題を解決してくれます。毎年の経営指針書にも全員が関わり、検証・改善を重ねています。こうした企業文化を育めたのは、同友会のおかげです。 |
| 神馬 | 私も同友会で学んだ一番大事なことは「共に育つ」という発想でした。私は自社工場を持たず協力工場に依存していますが、同友会に入ってからは「下請け」ではなく「パートナー」と呼び、財務状況も共有して助け合う関係を築きました。経営が厳しい時には単価を見直すなどの配慮も行い、一緒に社員旅行に行くほどの信頼関係となり、長年連携を続けられています。社内にも「共に育つ」風土を根付かせるため、社員共育大学に社員と共に参加し、学びを持ち帰って話し合う場を設けました。その積み重ねが社風の確立につながり、私が社長を務めた期間は本当に良い経営ができたと自負しています。 |
| 藤田 | 滋賀での体験以降、社員との関わり方が大きく変わり、人間尊重の経営を本気で推進するようになりました。「社員に会社を好きになってもらいたい」「誇りを持って働いてもらいたい」との思いから、経営情報の開示や理念・指針の充実に取り組みました。 同友会に入会後、初めて新卒採用に挑戦し、96年に入社した3人のうち1人は現在の社長に成長しました。当時社員20人規模で不安もありましたが、若い人材を採り育てたことで組織に活力が生まれました。現在は社員の7割が新卒採用です。経営指針書は言わば会社の取扱説明書。これを全社員で共有できたのも、同友会で学んだからこそです。 |
| 髙橋 | 医療・薬局業界は厳しい環境ですが、当社が業績を維持できているのは、16年間にわたり毎年欠かさず経営指針書を発表し、PDCAを回し続けてきた成果です。課題を洗い出し事業計画に反映する、この地道な継続こそ大切だと学びました。今、中同協の障害者問題委員長を拝命していますが、全国の仲間と活動する中で「人を生かす経営」の重要性を痛感しました。先日行われた障害者問題全国交流会では「『人・もの・カネ』の中で今は断固『人』が第一」と議論され、困っている人に手を差し伸べ、共生社会を築くことの意義を実感しました。 当社の理念は「命ある企業」。社員一人ひとりを細胞や臓器に見立て、互いに血液を送り合い守り合う組織像を描いています。赤石さんの数々の著書にもあるように「人は生かされている」ことを経営者が自覚すれば会社は必ず良くなる。理念をブレずに実践してきたからこそ、社員が一丸となり厳しい環境でも踏ん張れているのです。 |
仲間との出会い
| 藤井 | 次に同友会活動を通じて得た経営仲間・同志との出会いについて、印象的なエピソードを教えてください。 |
| 土井 | 髙橋さんの「人を生かす経営」に関連して補足です。大田先生は「環境を整えれば人は自然に育つ」と説いていました。つまり、経営者が無理に何かをしなくても、良い環境を整えれば人は成長するという視点です。入会当初は今は亡き横谷敦子さん(㈱メイコー代表取締役)という経営者に大変お世話になり、同友会のイロハを夜中まで教えていただいたり、叱咤激励を受けて鍛えられました。また、仕事を頼む際には「同友会の仲間にお願いしよう」と思えるのも大きな魅力で、幅広い業種の仲間がいることは心強く、私にとって同友会はなくてはならない存在です。 |
| 藤井 | 神馬さんはいかがでしょう? |
| 神馬 | 同友会の仲間は、人間尊重の経営を長年実践してきた信頼できる方々ばかりです。新しい挑戦を語れば「面白いね、応援するよ!」と前向きに背中を押してくれる。否定的な人が多い世の中で、同友会には自己責任を全うし、厳しい局面でも愚痴に逃げず前を向く仲間が揃っています。私自身、元気を失いかけた時に何度も励まされ、スイッチが入った経験があります。岡山同友会にも尊敬できる経営者が多く、本音でぶつかり合い、励まし合えたことは何物にも代え難い財産です。仲間から元気をもらえる―それが同友会の最大の魅力です。 |
| 藤田 | 私にとっても同友会の仲間は特別です。経営者同士が見栄や自慢や損得ではなく、課題や弱みまで本音で語り合える場は他にはありません。リーマンショックで経営が窮地に陥った時、当時の理事や磨田事務局長に励まされました。経営の悩みを打ち明けた時も、事例やノウハウを惜しみなく共有してくれました。こうした信頼関係に支えられ、危機を乗り越えることができました。 |
| 髙橋 | 私は同友会のご縁で全国に仲間ができました。各地で薬局経営の会員とも知り合う機会が多く、全国80~90社ほどの同友会の薬局仲間で24年に「薬局部会」を立ち上げ、情報交換を開始しました。25年の1月には10数軒の薬局経営者が集まりディスカッションし、その縁で7月には経営指針発表会に駆けつけてくれました。 同業であっても同友会仲間はライバルではなく同志です。悩みや課題を共有し、高め合える関係になっています。現在はこの1月に東京、その次は石川で集まろうと持ち回りでの交流会を計画しています。 同友会は自主的な団体で、許可を得ずとも自分たちで部会を作れるのも魅力です。業界を超えても同業者同士でも、学び合い支え合う仲間づくりこそ同友会活動の醍醐味だと思います。 |
次世代へのメッセージ
| 藤井 | 同友会の次世代会 員やこれから入会する若手経営者に伝えたいことは何でしょうか? |
| 土井 | 若い経営者には、ぜひ同友会に入って学んでほしいと思います。やがて退会する人もいますが、そこで得た学びが社会に活かされるなら、それも同友会の役割です。同友会は人づくりの出発点を提供する場なのです。会員数は現在約550人ですが、将来2,000人、3,000人と増えるに越したことはありません。ただ重要なのは数ではなく「きっかけを作る」こと自体が社会への貢献だという点です。一人でも多くの若手に門を叩いてほしいし、私たちも次世代を歓迎し、支えていきたい。そして中小企業は平和な社会でのみ繁栄できます。世界では紛争が続いていますが、戦火の下では医療も福祉も企業経営も成り立ちません。何より平和が大切であることを次世代に伝えたい。平和なくして同友会理念の実践はあり得ず、このことはこれからの時代ますます重要になるでしょう。 |
| 神馬 | 私が伝えたいことは2つあります。1つ目は「人と人とのつながりの大切さ」です。同友会は自主・民主・連帯の理念のもと、人間尊重の経営を追求しています。オンライン化が進む時代ですが、人との直接の交わりの中でしか学べないことがあります。辛い時は仲間に相談し、直接語り合うことの大切さを次世代に伝えたい。実際、60代後半以上の有志による「シニア部会」をつくり、3カ月に一度集まって盛り上がっています。年齢とは関係なく自社と自分に責任を持ち、後輩に伝えられることを伝え、一緒に学びたいという思いで活動しています。世代を超えて学び合えるのも同友会の魅力です。 2つ目は「科学的視点を忘れないこと」です。同友会は人間性や社会性を重視しますが、同時に科学性も欠かせません。論理的に物事を捉え、財務やマーケティングを学ばずして良い会社づくりはできません。次世代の皆さんには科学的手法も貪欲に学び、「良い会社・良い経営者」を目指すため、人間性・社会性と科学性のバランスを大事にしてほしいと思います。 |
| 藤田 | 同友会は「経営哲学を学ぶ学校」と言われ、10年、20年と腰を据えて学ぶ場です。滋賀同友会の先輩から「同友会は農業のようなもの。学び続けて種を蒔けば必ず芽が出る」と教えられました。まさにその通りで、焦らず地道に学び続けてほしいと思います。学んだら実践し、また学ぶ——その繰り返しで経営は良くなります。労使見解に基づく人間尊重の経営を継承し、「人を生かす」会社を築いてください。一人ひとりの持ち味を活かし、社員が幸せに働き、かけがえのない人生を全うできるよう支援することが経営者の務めです。同友会で学べば必ずそれが実現できます。次世代の皆さんには、我々の築いた伝統を受け継ぎ、さらに発展させてもらいたいと思います。 |
| 髙橋 | 若い経営者の皆さんに伝えたいのは、まず歴史と理念を学ぶ大切さです。障害者問題全国交流会でも問題提起しましたが、『中同協五十年史』の冒頭には「歴史と理念に学び未来をひらく」と記されています。過去を学ばずして新しい未来は創れない——まさにその通りです。 去年は戦後80年、「労使見解」50年という節目の年でした。「労使見解」を作成した先輩方は戦争を経験し、「中小企業は平和な社会でのみ繁栄できる」と提言しました。終戦直後の経営環境は厳しく、労使紛争により命を絶った経営者の話も残っています。それでも先人たちは自主・民主・連帯の理念を掲げ、決してブレずに活動を続けました。今の時代は恵まれています。だからこそ私たちは先人の築いた理念に誇りと自信を持ち、地域の課題解決にも取り組む同友会活動を続けなければなりません。若い世代の皆さんには、歴史と理念をしっかり学び、自信と誇りを持って未来を創っていってほしいと願っています。 |
| 藤井 | 本日は長時間にわたり活発なご議論ありがとうございました。先輩方の体験から理念と歴史を検証することの大切さ、そしてその土台となる平和の尊さまで教えていただきました。この議論を通じて得られた示唆を、我々の世代がしっかり受け止めてまいります。 |
この後、「40周年を迎えた今、私たちは何を守り、何を進化させ、何を次代へ手渡すのか?」を討議の柱に据え、グループ討論を行いました。発表では、「経営者の『生き様』を理念に重ね、本気で考える姿勢が今は薄れている。だからこそ同友会の歴史を学び直し、厳しい時代に助け合った精神を理解し、次世代へ繋ぐことが必要。学びの場を守り進化させ、より良い方向へ築き上げていこう」「つい答えを急ぎがちだが、本来の学びは答えを探し続ける過程にある。様々な価値観を持つ仲間と本気で語り合い、自己開示し、理念を共有する仲間と助け合うことが同友会の醍醐味だ。守るべき理念を軸に、新しい価値観を引き出す議論の場を整え、青年経営者を増やして思いを次世代に手渡していく必要がある。人が育つには人との対話が不可欠であり、そこから新しいアイデアも生まれる。中小企業経営の楽しさや社会的影響力を社員や学生に伝え、成果を上げて事業を発展させることで、その言葉に説得力を持たせることが経営者の責任。理念や事業承継を語り続け、次の40年へ維持・発展させていかなければならないと決意した」との意見が交流されました。(s)


