2021経営者フォーラム
未来を見据えて自社の在り方を見つめ直そう
-参加者50人で自社ドメインについて意見交換-
藤井孝章・代表理事の開会挨拶に続いて、江本昌弘氏に「DJ歴30年の3代目は、コロナ禍の中、創業80年の老舗をいかにして甦らせたか?」とのテーマでお話しいただきました。
東かがわ市は手袋の出荷額日本一を誇ります。ところが、日本の手袋の国内生産は10%ほどで、90%は海外生産に移行しています。江本氏が入社した当時、すでに地元の手袋産業は衰退し、職人は激減していました。自社に戻った江本氏は危機を感じていたものの、目の前の仕事だけで手いっぱいだったそうです。そんな同社を、売上の八割を占める企業の倒産という危機が襲いました。一時は廃業も考えた江本氏ですが、地元の仲間((株)タナベ刺繍・田部智章氏)から「江本手袋には残ってほしい。一緒に頑張ろう」と励まされ、一念発起します。それまで仕事とは切り離していた趣味の音楽を、事業に結び付ける方向に転換。それからは仕事が楽しく、柔軟な発想が生まれるようになりました。そこで生まれたのが、「佩(ハク)」というブランドです。香川では手袋の着用を「佩く」と表現するそうで、「日常に溶け込んだ手袋産業を残したい、手袋職人を守り育てたい」との思いを込めて命名したそうです。江本氏は、東かがわを手袋職人の聖地にすべく、日々職人の地位向上と職人の芽を育てることに力を注いでいます。
そんな江本氏が同友会に入会したのは2019年。経営指針の成文化に取り組み、自社の歴史、地域産業の歴史を紐解き、江本手袋がここで事業を営んでいる意義を見つめ直しました。指針書を発表したことで、自身や社員に良い変化があったと具体的なエピソードも紹介しました。
グループ討議では「10年後も通用する貴社のドメイン(事業領域)は何ですか? ドメインの見直しが必要だとするとどのように見直しますか?」をテーマに意見交換を行いました。
最後に江本氏は、「近くで支えてくれた仲間の存在が大きい。地域づくりは経営者の責任。地域に責任をもつ経営をして、経営を通して地域につながろう。そして、共に地域づくりに取り組む仲間を増やそう」と締めくくりました。
まとめとして山辺啓三・代表理事から発言があり、「行き詰まった時に力を貸してくれる仲間がいるというのは心強い。地域の企業を救いたいという思い―それが同友会の本来の仲間づくり。親身に思ってくれる仲間がいたからこそ、江本氏も素直に自分の力を引き出せた。私たちも学び合い、輝き合う同友会づくりに取り組もう」と呼びかけました。
<討議の柱>
いかに外部環境が厳しくとも経営を維持発展させるために、自社の事業領域をどのように見直し、何を実行しますか?
参加者の主な感想(抜粋)
●自社を過小評価せず、自社にしかできないことを貫いていく
●事業領域そのものは見直さず時代の変化に対応していく
●断固たる覚悟で地域づくりに取り組むことを、理念・ビジョン・ドメインで示したい
●自社と関わる人や、地域にコミットして新しいサービスや地域づくりに取り組むことこそ事業領域としたい
●経営理念は時代と共に変化する。設立から五十年を迎えるに当たり、百年企業を目指していける経営理念に変化させていく
●時代の変化と共に変えていくのではなく「進化させていくもの」ということを学んだ。コロナ禍でお客様のニーズが変化していく中、変えてはいけない本来の姿と、変えていく(進化させていく)ことを考え、実践していく
●今まで培ってきた技術に誇りと自信を持ち、時代や社会情勢に合わせて社員と共に話し合いながら見直したい
●お客様や地域、世界や社会にとってどんなお役立ちができるか、目まぐるしく変わる環境の中で、常に自社の置かれた立ち位置を確認し続けなければならない。当社はCO2削減のためどんなお役立ちができるかを考え続けている
●ただ自社だけ見るのではなく、地域から必要とされる事業領域を意識しなければならないと思いました。そのためにも経営者は常に視座高く責任をもって、人を生かす経営の実践をしなければならないと思いました。小さな一流企業! 職人とアイデアをカタチにする事業を誇りを持ってやっていきます