「生き残りをかけたイノベーション~JA浜中町の取り組みから」
<報告者>北海道同友会理事浜中町農業協同組合 会長理事 石橋 榮紀 氏
日 時: 2023年4月18日 18:00~
会 場: 岡山国際交流センター
<討議の柱>
今の経営を続けて、10年後、20年後も自社を維持発展させることができますか?
難しいとすれば、どのようなイノベーション(抜本的革新)が必要ですか?
東備支部と備北支部は、北海道同友会から浜中町農協・石橋榮紀会長理事を招いて合同例会を開催し、オブザーバーを含む42人が参加しました。事前に県内の酪農・農業関連の企業や団体約40件にも案内を行い、うち3人がオブザーバーとして参加しました。
企画の発端は、2016年に遡ります。香川で開催された全国研究集会に参加した東備支部役員が北海道の会員の報告に感激し、後日、報告者の会社を訪問した際に現地の案内役を買って出てくれたのが分科会の座長を担当していた石橋氏だったそうです。その時の石橋氏の行動力と影響力が強く印象に残ったとのことで、例会企画書を役員会に提案するに至ったものです。当初はオンライン開催を計画していましたが、石橋氏の「是非、みなさんと直接お会いして報告したい」との要望を受け、現地にお招きすることになりました。
石橋氏は1990年にJA浜中町の組合長に就任した際、浜中町の将来をシミュレーションしたそうです。すると、10年後には農業の担い手が急減して空き農場が増加、住民も減少して町の存続が危ぶまれることが予想されました。強い危機感を抱いた石橋氏はただちに農協の抜本的変革に着手し、浜中産牛乳のブランド化を目指して徹底した品質管理システムを構築。農家が休みたいときに休めるよう酪農ヘルパーを導入するなど、周囲の反対を乗り越えて次々と改革を進めました。こうした取り組みは全国の注目を集め、浜中産牛乳がハーゲンダッツのアイスクリームに採用されるなど、内外の高い評価を獲得するまでに至りました。また新規就農を希望する人たちも続々と集まりつつあると言います。
その背景には、石橋氏の「地域の課題を農協の課題として捉える」という姿勢がありました。石橋氏は、「地域の未来のために必要なことなら、どんなに反対されてもどんなに失敗しても絶対に実行するという覚悟でやってきた。それが地域の未来に責任を持つということです。皆さんも岡山の未来のために何をすべきか考え、実行してください」と強調しました。その後の討論では将来人口推計のデータを参照し、「今の経営を続けて、10年後、20年後も自社を維持発展させることができますか? それが難しいとすれば、どのようなイノベーション(抜本的革新)が必要ですか?」とのテーマで意見を交換しました。
最後に、座長の山口陵子氏が「地域の困りごとを自社の課題として捉え、同友会の仲間と一緒になって取り組みましょう。それができるのは同友会しかないと思います」と促しました。
参加者の主な感想(抜粋)
●データを用いた事業の推進は非常に強いと感じたので、そのようにしたいと思いました。
●新しいからやるのではなく必要だからやるが成功に繋がったと思いました。
●信念を持ち実行に移し、やり続けることの大切さを改めて認識しました。
●定量性・定性性が、実はイノベーションの鍵ということを気が付きました。思いつきでなくまずは地に足についた数値と向きあうことですね。
●長期的な視野及びデータ分析の重要性について改めて考える機会になりました
●とても有意義でした! 反対を押し切ってでも進める覚悟と、先進的な考えの柔軟さに感心しました。失敗を恐れず挑戦したいと思います。
●社員からの発想が出易いように、社員に明確なビジョンと方向性を示す。
●明るいビジョンを示し、やらなければならない事をしっかり語る。ここが良かったです。反対されても絶対に必要な事を信念や覚悟を持って突き進める姿勢が素晴らしいです。
●「社員の提案、言葉にアンテナを張ること」を敏感にしていく事。「明るいビジョンを示し、しっかりと語ること」をしていきたいと思います。
●グループ討論の最中に自社の新たな取り組みの一つとして、他県からのへの移住者や定住者の促進が思い浮かんだ。これを高梁市に限らず都市圏から地方への移住を希望する人たちの支援を行うことは、その地域の祭事文化を守ることにも繋がる。JA浜中町での取り組みのように、酪農業だけでなく、他の業界も巻き込んで町の産業を盛り上げていく取り組みが実際にあるのだから、その事例を応用していきたい。