中小企業魅力発信月間キックオフ行事
~憲章・条例活用推進シンポジウム~
6月2日、中小企業家同友会全国協議会(中同協)主催の「憲章・条例活用推進シンポジウム」がオンラインで開催されました。当日は39同友会、中同協、行政関係者、他団体などから約400人が参加し、憲章・条例の意義と展開について学びました。
2010年に閣議決定された『中小企業憲章』は、中小企業の社会的役割の大きさや政府の責務を明文化した記念碑的とも言える文書です。また「中小企業振興基本条例」は、各自治体における中小企業の役割を定義し、行政の中小企業振興政策の方向性や考え方を明文化した、言わば中小企業憲章の自治体版のような存在です。「憲章・条例活用推進シンポジウム」は、21年の憲章制定10周年を機に企画され、以降毎年7月の「中小企業魅力発信月間」に合わせて開催されているものです。
事例報告1は、「産学官が連携して『生きた条例』に~条例を活用し地域のにぎわいを創出」と題して宮城県南三陸町の事例が発表されました。佐藤仁町長は「条例制定がゴールではない。月1回の円卓会議で、地域課題の解決に向けて多様な主体が活発な議論を行うことが重要」との見解を披露。その後、(株)高野コンクリートの高野剛社長(宮城同友会南三陸支部理事)と同町の宮川舞・商工観光課課長から、事業者と行政の立場を代表してそれぞれ発言がありました。
事例報告2では「地域で若者を育て、若者が自分らしく生きる希望を持てる企業・地域づくり~共育型インターンシップから条例制定へ」とのテーマで、香川県ケアマネジメントセンター(株)の林哲也社長(香川同友会代表理事)が報告を行いました。
香川県は高卒者の17%しか県内で進学せず大半の若者が県外に流出してしまうとのことで、香川同友会はこの傾向に歯止めをかけるべく、高校生の「共育型インターンシップ」を始めました。会員に対しては「生徒に自社の企業価値を語れること」を参加条件とし、また生徒に対しては受入先で経営者等にインタビューを行い、その内容を模造紙にまとめて保護者らの前で発表することを求めました。その結果、生徒のインターンシップに取り組む姿勢が能動的になり、高校からも高く評価されたとのことです。この取り組みが教育委員会との包括連携協定締結につながり、三木町中小企業振興基本条例の制定に至ったとのことでした。
林氏は条例制定の背景として「地域を良くする効果を伴う運動が先行したこと」「経営の自主的発展を目指す同友会に対する期待の高まり」などを挙げ、「香川県内全ての自治体で条例制定を目指すとともに、既に制定している自治体でも信頼関係を強化し、若者が希望を持てる地域づくりを推進する」との決意を述べました。その後、希望者はグループに分かれて、各地の経済情勢や企業の現状、条例制定に向けた取り組みなどについて意見交流を行いました。
中小企業魅力発信月間キックオフ行事の感想(一部抜粋・再構成)
●南三陸町の行政と企業が共に地域課題に向き合いながら意見を交換し、課題解決に取り組んできた過程がよく分かった
●条例制定後に企業と行政で円卓会議を開催し、具体的に取り組んでいる点が素晴らしいと感じた
●震災直後から会員が中心になって地域復興に取り組んだことは全国の同友会の誇りだと思う
●共育型インターンシップを通じて企業も鍛えられ、学生も地元企業を知ることができて良い循環ができている
●具体的な報告でとても勉強になった。特に高校生との交流の事例は、全国的な課題である若者の地域離れを食い止めるヒントになった
●持続可能な地域づくりに関して具体的に考えることができて大変勉強になった。同友会の可能性や価値を感じることができた
●大学や短大・専門学校だけではなく、高校生を対象にした取り組みが必要だと思う。共育型インターンシップは成果が学校だけでなく親にも伝わる仕組みが素晴らしい
●同友会の委員会・部会の横断的連携がいかに重要であるかを学んだ。行政も強い危機感を持っていることが理解できた
●中小企業がまちづくりに取り組むことが地域からの信頼につながり地域経済も循環する。条例制定にはその確信と熱意が必要
●どの同友会も政策活動や条例運動の理解を深めることに苦労していることがわかり、各地の取り組みがとても参考になった
●人口減少を食い止め活性化を図る上で中小企業と同友会の役割は非常に大きいと感じた