魅力発信!
この連載では「よい会社・よい経営者」をめざして学び始めた新会員さんにスポットライトを当て、同友会でどんなことを学び、どんな企業を目指すかを語っていただきます。日々奮闘している会員企業を紹介します。
(株)ビサン
代表取締役 尾﨑 進 氏
2020年入会・岡山南支部
(株)ビサン
<所在地> 〒701-0151 岡山市南区植松237
<事業内容> 金属製品加工業。主な製品は、防音パネルと産業機械製品
<URL> 同社ホームページ
創業から現在までの経緯
(山下)尾﨑さんが創業なさったんですか?
(尾﨑)創業したのは父です。1968年に今の会社の前身となる備讃商事(株)を創業しました。社名は、備前の「備」と父の出身地である讃岐(香川県)の「讃」から取っています。金属加工に加えて80年頃から防音パネルの製造も始め、事業規模が大きくなってきたので2006年に製作部門と整備・レンタル部門とを二つの会社に分社化しました。それに伴って私は製作の方のビサンに移って、後に代表取締役になりました。
(奥田)最初から備讃商事で働いていたんですか?
(尾﨑)私はもともと海外で仕事がしたかったので、海外に拠点のある金属加工機械メーカーに就職しました。そこでは一年半ほどオーストリアで仕事をしていました。その後、26歳の時に備讃商事に入社したんです。ビサンに移ってからは新規事業として船舶用パイプ加工を始めました。
(奥田)新事業はうまくいったんですか?
(尾﨑)いや、10年頃から造船不況のあおりを受けて売上が激減し、4年で撤退しました。しかし幸運にも高専の先輩の依頼で搬送コンベアー部品の仕事が舞い込み、これがうまくいってV字回復できました。ものづくり補助金を活用して最新機器を導入したことで一気に仕事の幅も広がりました。それ以来、最新機器等への積極投資が新しい仕事を生む好循環が生まれました。おかげさまで、20年には「岡山県経営革新アワード」グランプリ、「おかやまIT経営力大賞」のチャレンジ特別賞も受賞することができました。
同友会との出会い
(奥田)お話を聞くと順風満帆で、悩みごとなんてなかったんじゃないですか?
(尾﨑)そんなことはありません。もともと企業理念みたいなものはあったんですが、いつまで経っても社内に浸透しない。理念は大事だという思いは強かったので、2年前に入会の誘いを受けて、すぐに成文化研修会に申し込みました。
(山下)受講してどうでしたか?
(尾﨑)理念だけ作っても、経営者がそれをわかりやすく社員に伝えないとダメなんだということがよく分かりました。今は「わくわくする次世代の町工場」という理念を掲示し、社内で共有するための勉強会なども行っています。今、ベトナムの実習生を受け入れているのでベトナム語に訳した理念も掲示しています。
(奥田)何か変わってきましたか?
(尾﨑)社員たちが前向きな意見を言ってくれるようになりました。やはり理念について語り続けることが大切だと思いますし、「言霊」の存在を実感しています。
(奥田)尾﨑さんご自身は?
(尾﨑)経営者の役割は、社員がやりがいと誇りを持って常に新しいことに挑戦できる職場環境を提供することだと考えるようになりました。それが社員の自己実現と成長につながっていると思います。
今後の展望
(奥田)これからの展望は?
(尾﨑)実習生を受け入れたご縁もあり、ベトナムへの進出やM&Aを検討しています。ベトナムは近代化が進んでいますが、それでもまだ貧困のために就労を余儀なくされる子供たちもいるので、彼らの自立支援にも関わりたいと考えています。
聞き手(株)イケル 山下 秀男
フナキ運輸(株) 奥田 建志
ものづくり補助金によって会社が成長できた分、そのお返しの意味もあって社会貢献を強く意識されていることが印象に残りました。
5年前から地元の中学校や、韓国の高校の校外学習を受け入れており、今後は大学生向けの就業体験を実施する予定だとか。「若者がモノづくりに興味を持てる場を設けることで、心豊かなモノづくりが次世代に受け継がれていってほしい」―尾㟢さんの願いだそうです。
執筆=河合直哉行政書士事務所 河合 直哉