2020新春経営講演会
業界の常識を打ち破り、選ばれ続ける企業へ
~顧客至上主義から「社員の幸せ至上主義」へ~
拓新産業 株式会社会長 藤河次宏 氏((一財)福岡同友会・会員)
1月20日、2020新春経営講演会を開催し、420人を超える会員、社員、オブザーバーらが参加。拓新産業(株)藤河次宏会長の講演から、若者に選ばれる魅力的な企業づくりについて学びました。
開会行事では藤井孝章代表理事の挨拶に続き、岡山市の大森雅夫市長、岡山県産業労働部の吉田光宏次長、(公財) 岡山県産業振興財団の三宅昇理事長より祝辞をいただきました。
藤河会長の講演では、自社の職場環境改善の取り組みと強靭な体質の企業づくりを中心にお話しいただきました。藤河氏が職場環境改善を決意したきっかけは、今から30年前に同友会の合同企業説明会に参加したことでした。他社のブースでは学生が大勢集まって担当者の説明に熱心に耳を傾けているのに、自社のブースには誰も寄りつこうとしません。とうとう最後まで一人もブースを訪れなかったことに対し、「このままではわが社の将来はない」と強い危機感を覚えたと言います。以来、若者に選ばれる企業への変革を目指して、完全週休二日制や有給休暇完全消化に着手。さらに数年かけて残業ゼロ、休日出勤ゼロも実現しました。当初は取引先の反発も強かったそうですが、何度も足を運んで会社の方針を説明するうちに徐々に理解も広がりました。疑問の声は社内でもありましたが、藤河氏は「なぜそうすることが必要なのかを朝礼で繰り返し伝え、経営者の本気度を示すことで社員も変わってきた。時間はかかっても凡事徹底することが大切」と強調しました。そして「一度や二度伝えただけで諦める経営者や、少しできるようになるとそれで満足して伝えることをやめてしまう人がいるが、それは間違い。当社は何年も同じことを繰り返しながら改善を重ねてきたからこそ今がある」と、粘り強く継続することの重要性を説きました。わずか数人の採用枠に数百人の学生が押し寄せるようになった現在でも、同社では取引先に対する丁寧な説明を欠かさないと言います。これらの大胆な変革を支えたのは、藤河氏の「『耐える経営』と『備える経営』が大切」という信念でした。拓新産業(株)は目先の売上を追い求めるのではなく、コスト削減や業務改善を徹底する「耐える経営」によって利益を追求。その効果を数値等で示すことで社員のモチベーション向上にもつなげています。同時に将来の財務予測を何十通りもシミュレーションするなど、健全性を重視した「備える経営」によって財務基盤の強化にも取り組んできました。藤河氏は、職場環境改善を支えるこれらの経営努力の必要性についても強調しました。最後に藤河氏は「同友会の共同求人で採用し、幹部にまで成長した社員が事業承継に名乗りをあげてくれた。これこそが当社の『社員の幸せ至上主義』の成果」と語り、講演を締めくくりました。
閉会挨拶には奥田建志・実行委員長が立ち、参加のお礼を述べるとともに、オブザーバーの皆さんに「同友会は社員を最も信頼できるパートナーと考え、経営者の責任を全うするために学び続ける会です。是非、一緒に学び合いましょう」と呼びかけました。
その後の賀詞交歓会では金融機関の方も多数参加し、懇親を深めました。山辺啓三・代表理事は閉会あいさつで「積極的に県外に出向き、全国の優れた実践事例から得た学びを岡山に持ち帰って大きな灯にしていきましょう」と提起し、閉会となりました。
参加者の主な感想(参加者アンケートより抜粋)
〈会員〉
●「経営指針+共同求人+社員教育」が人を生かす経営の根幹になっていることがあらためて確認できました。企業づくりにおいては何よりも経営者の姿勢が大切だということを学びました。
●指針を成文化し、採用し、育成する。やっているつもりだが藤河会長のように自信を持って語れない自分がいる。取り組んできた歳月の違いもあると思うが、それ以上に経営者の覚悟のレベルが違うことを痛感した。
●「新しい試みを始める時は、既存の業務を減らすのではなく捨てるぐらいの覚悟が必要」というお話に強く共感しました。経営者の覚悟を伝えるためにも、何を最優先するのかを明らかにすることが社員のやりがいにつながると思います。
●顧客満足度よりも社員満足度を優先するために、売上を必要以上に伸ばさない。ただし経常利益を上げるためには本気で取り組む。こうした方針が明確になっているからこそ、社員も会社がブレていないのだと思います。
●拓新産業で働きたくなった。実践するとはどういうことかも具体的に分かりました。
●「無駄な投資をせず、攻めを抑える」という考えはあまりイマドキではないですが、ただ大きくすることだけが経営の目的ではないと気付かせていただきました。
●覚悟を決めて思い切って実践を始め、それを継続するしかないという厳しい話でした。自社で「7時間労働」を検討していますが、やるしかないと思いました。
●社員に出番を与える会社、実績をフィードバックできる会社を目指します。
〈社員〉
●わが社は藤河会長のように社内改革を継続的にできているものがほとんどなく、改善に反映されておりません。自社を振り返る機会となりました。
●確固たる理念をもち、反感や反発を恐れず全ての責任を背負い、ある種独裁的に牽引していくことがトップの役割だと感じた。
●問題が発生した時、その解決案を立てて試行錯誤することが重要だと感じた。ほとんどの場合は社員同士のコニュニケーションで解決できる。部門を超えた社員同士のコミュニケーションをより頻繁に行い、必要に応じて経営陣に提案していきたいと思います。
●実践することで新しい課題が見つかり、それを一つ一つ潰していくことを継続されていて凄いと思いました。
●普通は前年を上回る目標を立てるところを、あえて実績が下がることを見込んだ目標を立てる。社員の幸せを本気で考え、貫くことが肝要であると大変勉強になりました。
2020新春経営講演会にご参加いただき誠にありがとうございました。
2020新春経営講演会ご参加の御礼
実行委員長 奥田 建志(フナキ運輸(株) 代表取締役)
2020新春経営講演会にご参加いただき誠にありがとうございました。おかげさまで、盛会の内に終えることができました。心より感謝申し上げます。
初めて実行委員長という大役をいただき、自分自身の大きな気づきと学びをいただきました。藤河会長のお話から、社員さんの出番を作ること、将来を見据えて備えることの大切さ、それを実践し続けていく重要性をあらためて感じました。また打合せで間近に藤河会長に接して、講演会では聞けなかった事も聞けて、とても参考になりました。凡事徹底し、10年、20年先を見据えて小さな努力をしていくことが何よりも大切であること。またそれが、故赤石義博氏も言われていた「生きる」「暮らしを守る」「人間らしく生きる」という「人間尊重の経営」につながるのだと思います。
藤河会長も講演の中で「全国行事に参加することで勇気をもらい、続けて来られた」とおっしゃっていましたが、2月には京都で「中小企業問題全国研究集会」があります。素晴らしい経営者と出会えるチャンスでもあります。そこで気づきを得て自社に持ち帰り実践することが大事で、一番の学びになると思います。是非、全国にも学びに出かけましょう。
小さな努力を毎日続けることが大切で、変わり続けていることが自分の一番の成長につながります。皆様のご健康とご多幸をお祈りし、書面ではございますがお礼の挨拶とさせていただきます。