岡山同友会・2020 オンライン経営者フォーラム
同友会の学びを実践し、
逆風にも屈しない強靭な企業づくりを
岡山のグループ討議は他人事になっていないか?
<報告者>エイベックス株式会社 代表取締役会長 加藤明彦 氏(中同協 人を生かす経営推進協議会代表)
2020年11月13日(金) / オンライン会議システムzoom
山辺啓三・代表理事が開会挨拶を述べた後、鈴木祥成・経営労働委員長が「コロナ禍の現在だからこそ、目前の経営課題に追われるのではなく、長期的な目線で社員が生き生きと目標を持って成長できる会社づくりについて学び、実践する契機としたい」と趣旨説明を行いました。続いて、中同協副会長・人を生かす経営推進協議会代表の加藤明彦氏((株)エイベックス会長)より「逆風をもって徳となす」と題した問題提起をいただきました。
加藤氏はコロナ禍における自社の対応として、「感染予防の徹底」「6割操業を想定した運転資金の早期確保」「賃金カットゼロおよび雇用カットゼロ宣言」「経営方針の見直しと社内展開」「計画の定期的・継続的な検証(計画と実績との月々の差異分析など)」などを挙げ、これらの手を打つことで一時は前年比七割減まで落ち込んだ売上が早期回復し、7月からは黒字転換したことを紹介。それを可能にしたのは、同友会の「人を生かす経営」にほかならないことを強調しました。また、経営者の責任とは端的に言って会社をつぶさないことであり、経営者の覚悟とは雇用を守ることであることを訴えるとともに、同友会が提唱する「経営の科学性」を担保しようとすれば、管理会計の導入は必然であることも説明しました。現下のコロナ不況とかつてのリーマンショック時の不況との違いについては、「リーマン時は世界的な経済の縮小に直面したため、『新規市場開拓による市場創造』が戦略として有効だったが今回は違う。コロナ禍では接触や移動の制限に伴う経済の停止・停滞が根底にあるため、市場の環境変化に対応した未来志向の『差別化による市場創造』が必要」と分析。危機察知能力を高めて市場や顧客のニーズの変化をいち早く読み取り、先手を打つことで新しいビジネスモデルを自ら構築すべきとの見解を示しました。そのためには社員の潜在能力の全面開花と全社一丸体制の構築が必要であり、雇用の維持は必須の条件であることも付け加えました。最後に「同友会では素直に学びましょう。そして社員を最も信頼できるパートナーと考え、共に育ち合う会社づくりを続けましょう」と締めくくりました。
グループ討議では「人を生かす経営の総合実践において、現在、自社で課題となっていることは何ですか? またその課題について、同友会の学びをどう活用し、いつまでに何を実践しますか?」のテーマで意見交換を行いました。各グループから出された質問に対して、加藤氏から「抽象的・概念的な質問が多い。岡山同友会ではグループ討論が他人事の意見交換になっているのではないか?」との指摘があり、参加者の感想文ではその点について触れたものが多く寄せられる結果となりました(後日、理事会でも議論)。最後に、浅野浩一・社員教育求人委員長が、まとめと行動提起として、「財務・人事・法務の課題を経営者が正確に把握し、何があっても事業を継続する覚悟で本気の経営改善に取り組みましょう」と訴えました。
参加者の主な感想(抜粋)
人を生かす経営の総合実践に向けて、いつまでに何を実践しますか?
●まずは就業規則。何のための就業規則なのかを改めて見直し、必要があれば年内に改定する
●社員の誰もがワクワクするような働きがいのある10年ビジョンを社員と共に来年7月末の指針発表までに作る
●来期経営指針書作成に、課題であったBCPと具体的な社員教育計画を組み込む
●経営指針書を作成するために、自社の向く先を今日からあらためて明文化していく。社員さんに働く目的の再確認と、目標に対してどうしていきたいかを聞き、明文化する。経営指針書を来期までに具体的(社員さんと共に考える)に作成し、来期が60期となるので、全体発表を行う
●12月末までにスタッフと今後の自社をどうするか相談し、業務改革、配置換え、来年の経営指針、中長期の作成を行い、利益を出しやりがいのある働ける会社を作っていく
●経営指針の作成に、あらためて全社員で取り組む。今期指針作成が遅れているので、年内までに作成する
●スタッフのための指針書を今年中に作り直す
●来年7月までに自社の経営理念について、人を生かす経営という観点から経営者・社員と共に経営指針書の作成をする
●現在作っている100周年ビジョンを見直し、新たな10年ビジョンを社員さんとともに作る
●指針書再考のためのロードマップを1月までに作成する
●3年計画で社員と一緒に経営指針書が作成できるようにする
●5年後までに、自主的社員を育て、事業承継する
●経営計画書の進捗について、社長と部門別社員との4半期ごとの定期的な意見交換会を実施する
●人事評価基準を6月までに作成する
●成文化研修を来年受講し、9月までの学びを受けて、12月までに経営指針を一旦形にする。また1月から「認める」社員面談を行う
●経営指針成文化研修修了後、社員と経営指針を考え、再来年1月に発表する
●新年度の指針書作成には、多くの社員を巻き込んで作成する
●貸借対照表(B/S)の自己資本に相当する「人は資産」だと位置づける ⇒ すぐ認識をあらためた
●未来の先取りが重要と考え、2030年ビジョンを作成し、全社社員に明確な将来像を示す。
印象に残ったこと、学んだこと、自社に取り入れようと思ったこと
●「生産条件」から「生存条件」に経営姿勢を変えたことで、業績が伸びている点。生存条件( 人間らしく生きる) について、深く掘り下げて考えてみる機会を持とうと思う
●同じように人を生かす経営、経営指針作り、企業変革支援プログラム等取り組みをしていたが、情勢分析などしていなかった。日頃からの危機意識を持って勉強が必要
●経営者は、上から目線になっていないか? 人は不完全であるというような自覚を持ち、経営者と社員が対等な立場で、社員1人1人の能力が発揮できる組織を作っていきたいと思った
●いかに経営環境が厳しくとも雇用を守る姿勢
●社員は自分の子供のようなものと思って愛おしく思っている。腹の立つこと、困らされることもあるが、見守る、待つ、受け入れる、信じるを心掛けている。でも本当にできているか? 自己満足ではないか? 自問自答していく
●1つの出来事でも深く考え社員を喜ばせるために私は何ができるのか、深く考えながら経営したい
●加藤会長でも指針で食えるまで20 年と話されていた。コツコツと続けることが大事だと実感した。指針書再考を少しずつでも進める。また、「組織は社員の家族まで」という言葉が印象に残るとともに、実践していくべきこととあらためて思った
●今回の報告で最も印象に残ったことは、経営者は常に社会の情勢に敏感でなければならないこと。そのためには外に出て様々な情報をキャッチすること。素早く危機に対しての対応をすること。次に、1 人1 人の個性を生かすことと、組織における役割分担を明確にすること。これにより社員自らが自主的に行動できるのだと思った。管理会計を実践し、P/L を分析していきたい。来期は、方針は経営者がたて、実行計画は社員自らが立てた指針書作りをしたい
●コロナ禍での対応も迅速確実で、同友会の学びは揺るぎないものと感じた。私も2 代目であり、今後の後継問題においては「社員がいることを忘れてはいけない」この戒めを肝に銘じて取り入れなければ不幸を招くと感じた。また岡山のグループ討論にも言及され、「人を生かす経営」の学びができていないことを見透されていた。地区や支部で本気で語り合える仲間づくりをすること、委員会では課題解決に向けた学びをしっかり行うこと。基本に立ち戻る必要性を感じた
●同友会の基本の学びから今回のコロナを乗り切ったことを伺い、これから学ぶにあたって基本に忠実に実践しようと思った。また情報収集を社員そしてその家族のつてなどを使い、形にしていったことが本当にすばらしい。それだけの信頼関係が結べるよう、1つ1つ実践していきたい
●同友会に入会し長年実践し続けて会社として大きく成長していても、同友会の学びを大切にされている姿勢が印象に残った。私は入会して10年以上になるが、「人を生かす経営」や「手引き」などまだまだ読めていない部分もあるので、しっかり読み込んで実践しなければと感じた
●加藤さんの資料から・・・・私が一番よくわかっていて、正しいという自信過剰・うぬぼれがあった。私が、一番会社の事を心配していると思った。人の話を聞かず、私には私のやり方があると力んでいた。(社
員が問題点に気づいていても、「言えない・言ってくれない社風」になっていた)・・・これは、全く私のことです! 同友会で学びながら、いつの日かこれに気づき、会社の経営・社員が思うように動かないのは、私に原因があると深く反省しました。今回のご報告から、再度自分自身の見直しができました。もう一度労使見解に立ち返り、同友会の学びを社員と共に実践していきます。コロナ禍においても、全国各地の同友会のメンバーは「絶対に会社を潰さない」と前向きに乗り切ろうとしています。いかなる時もピンチをチャンスに変えられる経営者となるよう、決してあきらめず素直に実践していく覚悟です。また機会がありましたら、もっともっと加藤さんのお話をお聞きしたいです
●(1)「これもやろう主義」や「できるだけ主義」ではなく「これだけ主義」でいく (2)チャンス(運)は「危機感があるか」どうか? (3)会話(議論)をする時は、まず「目的(Way) を明確にする …… あらためて認識を新たにして、同友会活動と自社経営に生かす。