【活動報告】岡山県中小企業家同友会・2021新春経営講演会
中小企業立国ニッポンを取り戻す!
~社会の主役としての誇りと責任~
2021年1月21日オンライン開催
冒頭で髙橋正志代表理事が「先人たちが血の滲むような努力を重ねたからこそ、中小企業は社会から認められるようになった。先人たちに感謝するとともに、社会からの寄せられる期待に対して誇りを持ち、責任を果たしていきましょう」と挨拶し、開会しました。
広浜会長の講演では、中小企業家一人ひとりに求められる自助努力の意味と、同友会の現在の社会における立ち位置や果たすべき使命等についてお話しいただきました。
広浜会長は、新型コロナウイルス感染症の影響が急激に広がり始めた昨年3月以来、合計3回にわたって内外に発表してきた会長談話を引用し、「一人で悩まず会員同士励まし合おう」「資金手当てや経営計画の見直しを」「長期化に備えて視座高く変化に対応しよう」などと呼び掛けてきたことを紹介。また中同協が発表した「新型コロナウイルスに関する緊急要望・提言」では、国等に対して「中小企業を一社もつぶさない覚悟で臨むこと」「日本経済崩壊の危機を防ぐためには、国内企業の99.7%を占める中小企業の維持発展が不可欠であること」などと提起してきた経緯を振り返りました。その上で、「現在の状況はコロナだけではなく、消費税増税や深刻な米中対立等の影響も加わった複合不況。人々の行動変容が定着することで既存のビジネスモデルは見直しを迫られる。経済のV字回復もないと考えた方がいい」との見解を述べました。そして「国等の支援策には限界がある。一方で中小企業再編論なども出てきた。結局のところ一番大切なのは会員一人ひとりの自助努力」と語り、影響の期化を見据えた企業づくりの必要を強調しました。
自社のコロナ対応では、シミュレーションに基づく資金確保、借入返済も見越した利益確保のためのPDCA徹底、働き方の意識改革などの取り組みを紹介。そのために金融機関と密接なコミュニケーションをとることや、全社員による52週PDCAの徹底(部門計画の達成に向けて一人ひとりが週ごとに課題を設定して毎週進捗管理を行う。全員がPDCAサイクルを1週間で回し52週で1年が完結)、「人時生産性」(社員一人の一時間あたりの生産性)向上などに取り組んでいることを説明しました。
広浜会長は「半世紀以上をさかのぼる同友会の設立当時、先人たちは全くの白紙の状態から試行錯誤を重ね、『労使見解』や経営指針などを創りあげてきた。私たち現在の会員は、それらの仕組みを最大限に活用して成果を出すことが求められている」と話し、企業づくりの重要性を説きました。さらにこの十年で同友会の立ち位置は大きく変わったとして、「地域や行政に対する影響が各段に大きくなり、それだけに寄せられる期待も高まっている。社会の主役として周囲の期待に応え続けることが我々の使命」と語りました。
最後に「経営者自らが『どうせ中小企業だから』と卑下していないか。私は、周りを貶めないことはもちろんだが自分自身を貶めないことも大切だと思っている。一部では未だに中小企業蔑視の風潮もあるようだが、同友会で学ぶ私たちは誇りに見合う自助努力によってそうした誤ったイメージを払拭する先頭に立つ必要がある」と締めくくりました。
グループ討論では、「中小企業家としての誇りと責任にかけて、あなたが実践していること・これから実践することは何ですか?」をテーマに意見交換を行いました。今回は、討論の進行を補助するグループ長用シートと発表用紙の2種類のシートを使用し、学びを深める試みも実施しました。
グループ発表後の補足説明では、広浜会長は「会社の中で一番影響力があるのは経営者だが、同友会で学んでいる経営者は全体のほんのわずか。しかも同友会の社会的な立ち位置はますます大きくなりつつある」と話し、同友会で学ぶ経営者を「その意味で『特別に特別で特別な存在』」と表現。そして「それだけ大きな影響力を持つ特別な存在であればこそ、私たちは周りに少しでも良い影響を与え続ける必要があるということをもっと意識してほしい」と訴えました。
最後に山辺啓三・代表理事が「中小企業家としての誇りと責任は経営者自身の成長しかない。社員を大切にして、一歩でも前に進んでいくためには経営者が本気になること。本気だからこそ気付けることがたくさんあり、その先に成長がある」とまとめ、閉会となりました。
参加者リポート
●経営者の責任と中小企業としての誇りを学ぶ
コロナ禍で将来のビジョンが描けない―今そんな気持ちで経営をされている方もたくさんいるのではないでしょうか。そんな中で、「会社をつぶさない、雇用を守る」という経営者の責任と覚悟、社会に貢献する企業としての誇りについて学ぶことができたと思います。会社をつぶさないためには自助努力が必要で、企業は環境の変化に対し、事業領域の見直し、資金確保、当面の利益の確保、働き方の意識改革など、全方向に意識を向け、経営力のアップをする必要があるということに共感を得ました。同友会の会員は、会内での学びを生かして会社を成長させ、その実践を同友会にフィードバックする。それが同友会の最大利点であり、同友会に参加すること自体が自助努力の一つではないかと感じました。
グループ討論では、グループ長として新しい討論シートを使用し、意見交換を行いました。各社それぞれに悩みや課題が違うため、深堀りする内容やキーワードを抽出することに手間取り、グループの皆さんにはご迷惑をおかけしたかもしれません。しかしながら率直な意見を聞くことで、皆さんそれぞれ経営のヒントを得ることができたのではないでしょうか。最後に、どんな厳しい経営環境の中においても社員とともにビジョンを描く―そんな経営を心掛けようと思いました。
(株)大月組 代表取締役 大月 一真(備北支部)
●新春経営講演会で再認識できたこと
広浜様の講演は、このコロナ禍において私たちがどのように備え、乗りこえ、変革していくかについて、その糧と知恵を説いて下さる内容でした。
今後の発展のためには、現状を一過性の事態だと安易に考えてはならず、強くしなやかに適応し、将来の予測を行うことが必要とのこと。あらゆる情報を得、想像力が必要になると感じました。そして、中小企業の消滅は地域の衰退につながり、サプライチェーンの破壊を招くこと。地域の豊かさを維持するための責任を強く感じずにはいられません。
これから必要な対応は、資金と利益の確保です。さらに、事業領域の見直しと、データ分析により様々な角度から想定を行うこと。ここでも想像力・想定力が不可欠なのだと感じました。同時に、働き方の意識改革や主体的取り組みも必須。それを全社員で取り組み、PDCAを回し続けること。その重要性について、実例を交え伝えて下さいました。
総じて考えると、同友会が推進している主軸、経営指針に基づく経営につながります。全てのことを科学性・社会性・人間性の観点で整理し、情報とミックスさせて先を読み、アクションに連動させる。今回の講演を拝聴し、あらためてそのことが腑に落ち、諒解できました。
(株)ブレーンネットワーク 取締役 石川 明未(岡山北支部)
●自助努力で、コロナ禍を生き抜く
私は、昨年8月に入会したばかりですが、このたび初めて新春経営講演会に参加し、とても大きな学びをいただきました。一番私の心に刺さったのは、「今のコロナ禍で大切なのは、『自助努力』である」という広浜会長の言葉です。今の苦しい状況をどんなに嘆いても、決して状況は変わらない。座して死を待つような受け身ではいけない。苦しい中でも、可能性のある事業領域は何か? 見込まれる利益・売上がどこにあるか? 調査・検証し、PDCAを回す。とにかく常に考える。そうして主体的にレベルを上げる。主体性のないところに発展はない。こうした広浜会長の強いメッセージは、とかくコロナでしぼみがちだった私の心に喝を入れてくださいました。また、ともすると売上の減少をコロナのせいにし、言い訳にしていた自分自身に気付くことができました。
今、コロナでほとんどの企業が未曽有の危機に直面していることと思います。憎きコロナではありますが、これからの取り組み次第で、逆に「コロナがあったから新しい事業展開ができた」「新しい活路を見い出せた」―そんな風に変わることができるのではないかと、希望をいただきました。まだしばらく厳しい状況は続くと思いますが、私も「自助努力」を欠かすことなく、常に考えながらPDCAに取り組み、歩んでいきます。今後も同友会でさらに学びを深めて参ります。今後とも宜しくお願い致します。
耕せファーム 代表 江尻 伸雄(倉敷支部)